各シンチグラフィの概要を記載しております。随時、適宜更新していきます。
脳血流シンチ
放射性医薬品
- 拡散性トレーサ 血液脳関門を自由に通過出来る 133Xeや81mKrなどの放射性不活性ガス
- 捕獲型トレーサ 血液脳関門を通過した後に脳組織にとどまる 123I-IMP、99mTc-HMPAO、99mTc-ECD 静脈投与
123I-IMP 投与後、15~30分後に撮像開始し、投与後60分以内に撮像終了が望ましい(脳内から洗い出しがあるため)。また放射性ヨウ素が甲状腺へ摂取されることを防止するため、甲状腺ブロックを行う。
脳循環予備能を評価するためにacetazolamide(ダイアモックス)負荷を行う
肺血流シンチ
放射性医薬品 99mTc-大凝集人血清アルブミン 静脈注射 148MBq
肺毛細血血管にMAAが閉塞するところを観察する
重力の影響により肺血流分布が変化するため、背臥位or背臥位+腹臥位の2回に分けて投与する
投与時の体位によって、RI分布が変わるので注意する
肺高血圧症は下肺野と比較し、上肺野の血流が増加する。よって投与は座位で行う。
左右シャントがある場合は、脳、腎、肝臓などの臓器が描出されるで注意が必要みたい。
骨シンチ
放射性医薬品 99mTc-MDP、99mTc-HMDP 静脈注射にて555~740MBq
投与後2~3時間後に撮影を開始する。
放射性医薬品(99mTc-MDP、99mTc-HMDP)が尿排泄のため、検査前に必ず排尿してもらい、骨盤の障害陰影としての影響を少なくする
小児では骨端部に集積が見られる
次の時に有用。
- 悪性腫瘍の骨転移の早期診断 → 特に乳がん、前立腺がんで有用
- 原発性骨腫瘍の原発巣・転移巣の把握
- 骨髄炎の早期診断や病巣の広がりの判定 →早期診断に、単純X線写真より有用
- 骨折の部位診断と経過観察 → 疲労骨折の場合、単純X線写真より有用
- 異所性石灰化の検出 →悪性腫瘍による高カルシウム血症や副甲状腺機能亢進症などは良く軟部組織に異所性石灰化が見られる。よって単純X線写真より有用
- 代謝性骨疾患の評価
人工関節の弛緩、感染の検出には99mTc04-や99mTc-MDP、99mTc-HMDPを用いた関節シンチグラフィが有用。
心機能(心プールシンチ)
ファーストパス法と心電図同期マルチゲート法により種々の心機能パラメータをや局所壁運動の評価を行える。
ファーストパス法
放射性医薬品 99mTc-RBC、99mTc-HSA (緊急時は99mTc04–) 静注
末梢動脈より高濃度RIを急速注入し、静脈→右心系→肺循環→左心系→大動脈の通過過程を連続で動態収集する。
目的部位にROIを設定し、時間放射能曲線を解析する。右室駆出率が算出できる
心電図同期マルチゲート法
局所壁運動、左室駆出率などが得られる
心電図同期は、1心拍を20~30フレームに分割し、300~500心拍を加算して収集する
データ収集には、臨床ではフレームモードが多用されるそうです。リストモードは動作が重いため、あまり使用されないそうです。
心筋血流シンチ 201TlCl
投与 静脈注射にて、74~111MBq
201Tlは正常部位に取り込まれ、虚血部位などには取り込まれない
運動負荷では早期相は負荷直後、遅延相は4時間後。虚血がある場合、早期で欠損像、遅延相で再分布現象。
空腹時に行う。
心筋脂肪酸代謝シンチ
放射性医薬品 123I-BMIPP、静脈注射にて111MBq
2時間以上の絶食で投与
プレイナ像で、心臓/上縦隔カウント比(H/M比)を算出する
正常心筋には分布、病変部には欠損像。この欠損像では、虚血になったが救済された領域と心筋とみなせる。
肝胆道シンチ
放射性医薬品 99mTc – PMT 静注にて185MBq
肝細胞の胆汁排泄機能や胆道の開存状態を観察できる
異所性胃粘膜シンチ
放射性医薬品 99mTc04-(185MBq)を静脈注射で投与
99mTc04-は胃粘膜の粘液産生上皮細胞に取り込まれた後、胃内腔に分泌される性質を持っている。
メッケル憩室は小さな円形の限局性陽性像として、右下腹部に描出されることが多い
消化管出血シンチ
放射性医薬品 99mTc-RBC、99mTc-HSA、99mTc-HSAD 740MBqを静注
通常は血管外へ漏出しない放射性医薬品を使用する。そのため出血している部位がある場合は、明瞭に画像化される。
下部消化管出血で有用。次のメリットもある
- 微量な出血でも検知可能
- 出血部位を問わず検出できる
- 経時的に撮像することで間欠的な出血を検出できる。
間欠的 一定の時間をおいて起こったりやんだりするさま。コトバンクより勝手に引用
腎静態シンチ
放射性医薬品 99mTc-DMSA 185MBqを静注
静注後2〜3時間後に撮像開始、集積が悪い時は6時間後や24時間後に撮像する場合もある
腹臥位で撮像
腎動態シンチ
放射性医薬品 有効腎血漿流量(ERPF)→99mTc-MAG3、糸球体ろ過量(GFR)→99mTc-DTPA、両方とも静脈注射にて200~400MBq
検査前に排尿し、300ml程度を飲水(水負荷)
甲状腺シンチ
放射性医薬品 Na123I、Na131Iを経口投与、99mTc04-(185MBq)を静脈注射投与
Na123I、Na131Iを経口投与の場合は、ヨード制限が必要
海藻類(ノリ、コンブ、ワカメ、ヒジキ、ダシの素など) 1週間以上
99mTc04–は、ヨード摂取の影響を受けにくい
2倍程度の拡大撮影を行う
甲状腺の転移検索
甲状腺がんの95%が分化型甲状腺がんで、甲状腺術後(全摘)の機能低下状態では80%以上の転移部がヨード摂取を示すことから、転移巣の特異的診断薬である。
補足として
201TlClは分化型甲状腺がん、67Gaは未分化がん・悪性リンパ腫、131I-MIBGは随様がんの診断にそれぞれ有用です。
唾液腺シンチ
放射性医薬品 99mTc04– 185MBqを静脈注射
投与15分後から早期像の収集を開始する
唾液腺には、耳下腺、顎下腺、舌下腺があるが、耳下腺・顎下腺が描出される
ほとんどの唾液腺腫瘍は99mTc04–を摂取しないため、欠損や集積低下として描出される
ただしWarthin腫瘍は、陽性画像となる
唾液腺の集積程度、バックグランドや甲状腺と比較するため、甲状腺を含めて撮像する
副甲状腺シンチ
放射性医薬品 201TlCl、99mTc-MIBI(両者とも心筋血流シンチで使用される)
正常機能の副甲状腺を描出出来ないが、副甲状腺腫を描出出来る。
99mTc-MIBI 甲状腺は早い段階でwash out、副甲状腺腫にはstay
副腎皮質シンチ
放射性医薬品 131I-アドステロール 18,5~37MBqを静注
投与前日から7日間の甲状腺ブロックを行う
静注後6日後、腹臥位で撮像する
原発性アルドステロン症(デキサメサゾン抑制試験が行われることもある)、クッシング症候群などに有用
副腎髄質シンチ
放射性医薬品 131I – MIBG 20~40MBqを静脈注射。
投与後の2日目に撮像する。70回PM31では、投与24時間後が正解でしたので、調査中。
投与後24時間以内に50%が尿排泄される。
甲状腺被ばくを防止するため、投与後7日間は甲状腺ブロックを行う
カテコールアミン産生細胞に取り込まれ貯蔵される
褐色細胞腫、神経芽細胞腫などに有用
123I – MIBGは心筋交感神経シンチで使用されるが、副腎では認められていないそう。
腫瘍シンチ
67Ga
放射性医薬品 67Ga 74~111MBqを静脈注射にて投与
投与72時間後or48時間後に撮影する(炎症や不明熱の場合は6時間後の撮影も行う)
悪性リンパ腫、甲状腺未分化がん、肺がん(原発・転移)、上顎がん、原発性肝がんに有用。
デメリット
- 正常部にも取り込まれる
- 小病巣の描出ができない
- 深部病巣や肝臓内やその周囲、消化管などには集積しにくい
排泄は投与早期は尿から、その後は消化管から。→前処置として下剤や浣腸が必要である
201Tl
体内挙動はK+イオンと類似しており、特に腎への集積が高い
腫瘍への集積は組織血流を反映していると考えられる
67Gaと異なる点
投与早期から検査が出来る
67Gaは集積の低い分化がんによく集積する
良性悪性の鑑別診断に利用されている
リンパ節シンチ
センチネルリンパ節シンチ
放射性医薬品 99mTc-スズコロイド 99mTc – フチン酸(国試過去問より)
シンチカメラを使用する場合と術中に施行されるガンマプローブを用いる方法がある
乳がん、悪性黒色腫、消化器がん、頭頸部腫瘍などのセンチネルリンパ節への転移有無を知ることで縮小手術化が可能となり、不要なリンパ節郭清を防ぐことが出来ます。
リンパ節シンチ
放射性医薬品 99mTc-アルブミン、99mTc-スズコロイド、99mTc-HSAD、99mTc-フチン酸など 投与法は皮下注射
リンパ浮腫の診断、悪性腫瘍のリンパ節への転移などに有用
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